三月三十一日。マユが破綻した。四月一日。
僕は単身、かつて誘拐犯が住んでいた邸宅に足を運んでいた。つまり元我が家だ。今では、そこは『大江家』の所有物となっていた。元自宅で待ち受けていたのは、以前の姿を一片も感じさせない増改築。窓には鉄格子がはめ込まれた、歪な洋館的風貌。屋内では、家人による鳥肌な歓迎と忌まわしき過去との再会。
僕はすべてを受け入れ、屋敷を探索する。求めるものは、マユがまーちゃんに戻るための何か。しかし事態は混迷を極め始める。切られた電話線、水没する携帯電話、大江一家と共に閉じ込められる僕ら…ら?そうだ伏見、なんでついてきたんだよ。クローズド・サークルって、全滅が華なんだぞ。…さて僕は。みーくんを取り戻し、まーちゃんを救うことができるのだろうか。
今作は長編の上巻にあたります。
いつもと変わらず人をくったような文章、軽快とは言い難い論法、時々隠せない本音が健在です。
さて、いつもの殺人事件ですが今回は密室に閉じ込められてしまいます。
規模的には部屋でなく屋敷なんですが。
その屋敷と言うのが、何の皮肉か主人公の元家。
元、というのは今は大江と言う方が買い取って住んでいるから。
大江さんの妻は8年前の事件とその犯人一家の大ファンとのことで、屋敷にやってきた主人公を質問攻め、一緒についてきた伏見も屋敷に泊まることになり、なぜか大江妻は殺され屋敷は密室になってしまいました。
こういった状況で緊張感をもっていない主人公と、一般人の伏見との差異が如実に出ているので、彼の心の歪みが上手く表されてるのかな、と思います。
・・・煙に巻くような表現が多々見られる仕様なので断言が難しいのですが。
そしてやっと登場、大江湯女。
こちらが電撃文庫に投稿し、最終選考まで残った作品の主人公だったようで、全く変わらない戯言を繰り出してきます。
思考が似通っているから文量が稼げない、とは作中の言葉ですが作者の本音でしょうか。
そんな湯女ですが主人公いわく、容量がいいので最低限の嘘しか使わないとのこと。
初登場からお互い嫌いあっているようですが、傍目にはものすごい仲良しにしか見えません。
自己嫌悪、同族嫌悪はいまさら始まったことではありませんが、彼らの掛け合いは化かし合いのようで読んでて面白い。
前も言いましたが、このシリーズのだいご味は主人公のかたりだと思うんですよね。(二つの意味を内包している、と言うのを表現したかったのであえてひらがなです)
というかそれしか見どころはない、気がする、今気づいたけども。
あ、イラストは当然見どころ満載ですが。
個人的にはもっとカラーページが見たいです。
ともあれ、今回も例によって例にもれずの事態。
主人公と元主人公。
事件はどちらが解決するんでしょうか、それとも全滅してしまうのでしょうか。
この作品は唐突に全滅とか普通にありえそうで怖いですが、続刊が出てるので全滅はないのではないかと。
いや、主人公のいなくなった世界のその後ってことで続くのかもしれないですね、案外。
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん〈4〉絆の支柱は欲望
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